えっ、電気を作るしくみは同じなの?

えっ、電気を作るしくみは同じなの?

 電気は私たちの日々の生活を支える大切なエネルギーです。家庭、学校、会社、商店、工場などで使われている電気はどうやって作られているのでしょうか? 2014(平成26)年10月末現在、青森県内には大小合わせて72の発電施設(水力24、風力29、太陽光16、火力2、原子力1)があります。それぞれの発電のしくみをさぐってみましょう。(※発電施設の数字は青森県調べによる)

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火力発電も、原子力発電も、水力発電も、風力発電も、
基本的には自転車のライトをつけるしくみと同じです。

 発電機のしくみは「コイル」と「磁石」が基本となっています。導線を糸巻きのように巻いたコイルの近くで磁石を回すと電気が発生します。磁石の周りには磁力が働いていて、磁力はN極からS極に向かっています。この磁力を横切るようにコイルを動かすと、コイルの導線に電気が流れます。発電所にある発電機は、それぞれの材料を使ってタービンを回し、発電機を動かしているのです。自転車の発電機(ダイナモ)は自転車の車輪の回転で磁石を回して電気を作り、ライトを点けます。

自転車のダイナモの図は「環境学習ブック
やってみよう!考えよう!資源エネルギー」より引用

火力発電のしくみ

 火力発電は石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を燃やしてお湯を沸かし、その蒸気の力でタービンを回転させて発電します。つまり、やかんでお湯を沸かすときに発生する湯気の力で羽根車を回すようなものです。

火力発電のしくみの図は「あおい森のエネルギー物語
~先生のためのエネルギー読本~(小学校版)」より引用

 八戸火力発電所は東北電力初の火力発電所として1958(昭和33)年に運転を開始しました。2011(平成23)年3月に発生した東日本大震災で、太平洋側の火力発電所は甚大な被害を受けました。現在、主に運転されている5号機は震災後の供給力確保のために、2012(平成24)年7月、シンプルサイクル方式(燃料:軽油、出力27.4万キロワット)のガスタービン発電で運転開始。その後、環境負荷を低減するために、2014(平成26)年8月からガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンバインドサイクル方式(燃料:軽油)で発電を始めました。この発電方法だと同じ量の燃料で通常の火力発電より多くの電力を作ることができ、出力は39.4万キロワットに増加。発電電力量あたりの二酸化炭素の排出量も少なくなりました。

 さらなる環境負荷の低減と経済性の向上を図るため、今年7月に燃料を軽油から天然ガス(LNG)へ燃料を転換。これにより出力は39.4万キロワットから41.6万キロワットに上昇し、二酸化炭素の排出量もより削減されることになりました。 (※八戸火力発電所では石炭燃料を現在使用していません。)

火力発電の長所と短所

[ 長所 ]

●発電量を調整しやすく、急に電力が必要なときも対応できる。
●小さな発電機でも大きな発電機でも対応できる。
●電力をたくさん使う工業地帯や大都会などの近くに発電所を建設することができるので、送電時のむだが少ない。

[ 短所 ]

●石油や石炭などの化石燃料を燃やすため、二酸化炭素やいろいろな有害ガスを発生する。
●燃料のほとんどを外国からの輸入に頼っている。輸送にも多くのエネルギーが必要。
●世界の動きで燃料の値段が変化するので、電気料金に大きく影響する。
●地球にある化石燃料は量が限られている。

原子力発電のしくみ

 原子力発電も火力発電と同じように水を熱して蒸気を作り、その蒸気の力でタービンを回転させて発電します。原子力発電ではウランを燃料に使い、核分裂というしくみを利用しています。ウランが核分裂するとき、とても大きなエネルギーが発生します。たとえば1グラムのウランが核分裂すると、ドラム缶10本分以上の石油を燃やしたときと同じくらいのエネルギーが発生します。そのエネルギーを利用して火を燃やさずに蒸気を作ることができます。
 東通原子力発電所は2005(平成17)年12月に運転を開始した青森県初の原子力発電所です(現在は停止中)。

原子力発電のしくみの図は「あおい森のエネルギー物語
~先生のためのエネルギー読本~(小学校版)」より引用

原子力発電の長所と短所

[ 長所 ]

●発電時に二酸化炭素やいろいろな有害ガスを発生しない。
●少ないウラン燃料で大きな発電が効率よくできる。
●使い終わった燃料をくり返し使うことができる。

[ 短所 ]

●ウランの埋蔵量が少なく、産出国も少ない。
●放射能もれ事故の心配があり、安全性に問題。
●放射線を出す廃棄物を処分する施設が決まっていない。
●古くなった発電所をこわすとき、高い放射線を出す廃棄物が大量に発生する。

水力発電のしくみ

 水力発電は水が高いところから低いところに落ちる力を利用して水車を回転させ、水車に直結した発電機で電気を作ります。そのため、水量が多いほど、落差が大きいほど発電量が多くなります。浅瀬石川発電所のように大規模なダムを建設できる場所はほとんど開発されており、新しい水力発電所は作られにくくなっています。最近は河川の小さな落差を利用した中小水力発電が注目されています。

水力発電のしくみの図は「あおい森のエネルギー物語
~先生のためのエネルギー読本~(小学校版)」より引用

水力発電の長所と短所

[ 長所 ]

●発電するとき、廃棄物や二酸化炭素などの排出ガスを出さない。
●雨水などを利用するので、海外から原料を輸入しなくていい。
●春先の雪どけ水や台風などの急激な増水をダムに貯めておくことができるから洪水を防げる。
●貯まっている水を、生活用水や農業、工業にも使える。

[ 短所 ]

●大きなダムを建設するとき、山や森を開発するため、自然環境に影響を与えてしまう。水没する家や田畑もある。
●発電所を作れる場所が少ない。
●山奥に建てるため、建設時に大きなエネルギーを使う。
●都会から離れた場所に作るため、送電時にむだが出てしまう。
●水力発電だけでは、総発電量の10%にも満たない。

風力発電のしくみ

 風力発電は風の力で大きな風車を回し、発電機を回転させて電気を作ります。風力発電は大きな風車と発電機の入ったナセル、それらを支えるタワー、発電した電気を外部に送る変圧器によって構成されています。大型の風力発電機の中には風車の翼の直径が100メートルを超え、タワーの高さと合わせると180メートル以上になる巨大なものもあります。

風力発電のしくみの図は「あおい森のエネルギー物語
~先生のためのエネルギー読本~(小学校版)」より引用

 県内にはむつ小川原ウインドファームをはじめ、巨大な風車群の風力発電所が点在しています。1992年、竜飛に日本初のウインドファーム(現在は廃止され、ほとんどの風車は撤去)、2008年5月、世界初の大容量蓄電池を併設したスマートグリット型の風力発電所・六ケ所村二又風力発電所が運転を開始した青森県は風力発電の先進地として、日本一の風力発電総設備容量(※)を誇っています (※設置基数は北海道が一位。数字は2014(平成26)年3月末現在、NEDO調べによる)。

県名 総設備容量(kW) 設置基数(基)
北海道 316,361 289
青森県 333,763 214
鹿児島県 217,815 138
秋田県 152,329 120
静岡県 144,110 85
福島県 146,185 82
長崎県 108,360 77
石川県 120,620 73

風力発電の長所と短所

[ 長所 ]

●風力を使うので、自然環境にやさしい。
●資源に限りがある化石燃料と違って、無限に使える。
●小規模なものは屋根の上や町の中でも発電できる。

[ 短所 ]

●天気次第なので、安定供給がむずかしい。
●大きな発電をするためには、大規模な施設が必要になる。
●地域によっては発電コストがかなり高くなってしまう。

太陽光発電のしくみ

 太陽光発電は太陽電池によって光のエネルギーを変換して電気を作ります。太陽電池は、発電のために性質が違うn型シリコンとp型シリコンの2つのシリコン半導体を重ねて使用しています。太陽電池に光が当たるとプラスとマイナスの電気を持った粒子が生まれます。プラスの電気はp型シリコンに、マイナスの電気はn型シリコンに集まり、その結果、電極に電球などをつなぐと電気が流れます。これが太陽光発電です。発電効率を高めるため、太陽電池の表面には太陽光の反射を防ぐ反射防止膜がコートされています。

太陽光発電のしくみの図は「みんなのくらしを
ささえているあおもり県の電気」より引用

 雪の多い青森県は太陽光発電は向かないと思われがちですが、太平洋側はほかの東北各県に比べて日射に恵まれ、太陽光発電にふさわしい地域とされています。八戸太陽光発電所はそうした自然環境を踏まえて2011(平成23)年12月に運転を開始しました。

太陽光発電の長所と短所

[ 長所 ]

●太陽光を使うので、自然環境にやさしい。
●資源に限りがある化石燃料と違って、無限に使える。
●小規模なものは屋根の上や町の中でも発電できる。

[ 短所 ]

●夜間や雨天、曇天時は利用できない。
●大きな発電をするためには、大規模な施設が必要になる。
●地域によっては不向きなところがある。

それぞれの発電をバランスよく

 発電方法の特徴を生かして、水力、火力、原子力、太陽光や風力などさまざまな電源をバランスよく組み合わせるのが、エネルギー・ミックスです。化石燃料に乏しい日本は、経済性・安全性・環境問題などを考え、石油・石炭・天然ガスなどの火力、水力、原子力を中心に、さまざまな発電方法を効率よく組み合わせてきました。
 2015年6月、政府は2030年度の望ましいエネルギー・ミックス案を打ち出しました。原子力20~22%、石炭火力26%、天然ガス火力27%、石油火力3%、水力、風力、太陽光などの再生可能エネルギー22~24%という割合です。地球環境にやさしく、安全で経済的に電気を安定供給するためにはどうしたらよいかを考える一方、私たちが日々の節電につとめることもエネルギー・ミックスの大切な要素と言えるでしょう。

■電源別発電電力量の実績

《参考資料》

《参考資料》

●「あおい森のエネルギー物語~先生のためのエネルギー読本~(小学校版)」
 (北海道・東北地区エネルギー教育推進会議 発行)
●「環境学習ブック やってみよう!考えよう!資源エネルギー」中学校編 平成16年度版(東京電力発行)
●「みんなで考えよう 地球温暖化とエネルギーの未来2 電力と地球」(水谷広監修・小峰書店発行)
●「みんなのくらしをささえているあおもり県の電気」平成27年度版教師用
 (青森県エネルギー総合対策局原子力立地対策課 編集・発行)
●ほか