“技術”と“電気エネルギー”でアシスト 近未来の介護ロボット
身近な問題として考えよう
老いた身内の介護に行き詰まり、不幸な事件が後を絶たない。老人大国・日本では、今後ますます老人介護福祉の分野に科学的・社会的・人的エネルギーの支援が必要である。最先端の科学技術と思いやりの心から研究開発されている介護ロボットについて考察する。
日本は世界で類のない超高齢社会に突入
平成23(2011)年、日本の総人口は1億2,780万人を数えた。内閣府『平成24年版高齢社会白書』によれば、そのうち65歳以上の高齢者が2,975万人を占めており、過去最高を記録。これを65歳以上の高齢者が総人口に占める割合「高齢化率」で表わすと、およそ23・3%。その数字は毎年増加傾向にあり、今年には25・1%に増えると予測されている。
今から63年前の昭和25(1950)年には5%にも満たなかった高齢化率は、昭和45(1970)年に7%を超え、国連の報告書による「高齢化社会」と定義された水準に達した。
平成6(1994)年になると総人口の14%以上を高齢者人口が占め、「高齢社会」と言われるようになり、社会的な問題にまで発展した。以来、めざましい医療の進歩や栄養状態の向上などにより、高齢化率はどんどん上がり続け、今では国民の4人に1人が高齢者になろうとしている。
そして2年後の平成27(2015)年には、第一次ベビーブームの時期に生まれた「団塊の世代」が高齢者の仲間入りをするため、シニア層は3,395万人に達する見込みである。平成72(2060)年には高齢化率は39.9%に達し、2.5人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上になると予測されている。
[資料:2010年までは総務省「国勢調査」、2015年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」の出生中位・死亡中位仮定による推計結果 (注)1950~2010年の総数は年齢不詳を含む]
青森県は三世代同居が多い
日本の全世帯の中に、65歳以上の高齢者がいる世帯はどれだけあるだろうか。『平成24年版高齢社会白書』を見てみると、平成22(2010)年の段階で全世帯数は4,864万世帯。そのうち2,071万世帯、つまり5軒に2軒以上が高齢者と同居している。
さらに詳しく見ていくと、高齢者がいる世帯の4軒に1軒(24・2%)が家族など同居する人がいない「一人暮らし」、3軒に1軒(29・9%)が「夫婦のみ」で暮らしている世帯。「一人暮らし」は増加の傾向にあり、かたや「おじいちゃん・おばあちゃん、お父さん・お母さん、子ども」の三世代が一緒に暮らす世帯は、毎年少しずつ減ってきている。
世帯の構造を全国的に見てみると、この「三世代世帯」が「夫婦のみの世帯」や「単独世帯」をおさえていちばん多くを占める県は東北他方や日本海側に分布し、青森県もその中に含まれている。県内の子どもたちの多くは祖父や祖母(あるいは、そのどちらか)と暮らし、人が老いていく姿や「死」というものに直面する希少な機会を得ていると言えよう。
ちなみに「単独世帯」が多い上位は東京都、高知県、沖縄県。そのほかの道府県では「夫婦のみの世帯」が多くを占めている。
[資料:厚生労働省「国民生活基礎調査」(平成22年)より]
介護負担の軽減は国民的課題
人生において、介護を必要とせず自分で日常生活を送れる期間を「健康寿命」という。平成22(2010)年の厚生労働科学研究費補助金『健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究』の中の「健康寿命と平均寿命の推移」のデータによると、人の手を借りず、不自由なく自分で生活できる年数は、男性が70・42年、女性がそれより少し長い73・62年であった。
内閣府『高齢者の生活と意識に関する国際調査』平成22(2010)年において、60歳以上の人に「身体が虚弱化した時に望む居住形態」に関して質問すると、「現在のまま、自宅に留まりたい(46・2%)」、「改築の上、自宅に留まりたい(20・2%)」と答えた人が大半で、全体の3分の2が「今、住んでいるわが家に住み続けたい」と希望している。
内閣府による別の調査、『住宅と生活環境に関する意識調査』では、「もしも介護が必要となった場合、どこで介護を受けたいか」という問いに、高齢者の9割以上が「自宅」と答えている。同様に、「もしも治る見込みがない病気となったら、どこで最期を迎えたいか」にも9割を超える人たちが「自宅」を選んでいる。
慣れ親しんだ居住空間で、穏やかな気持ちで人生の幕を閉じたいと誰しも願うのだろう。そのためにも老人の介護福祉は必要不可欠な課題である。
しかし、介護は心身ともに重労働であり、介護に携わる家族や介護職のスタッフは腰を痛めるケースが多く、機械や設備等による介護システムの実現は急務である。介護する人を助ける「介護者を力持ちにする=パワーアシストスーツ」の開発をはじめ、さまざまな介護ロボットの研究開発や実用化が必須となっている。
広範囲で始動している介護ロボット
「介護ロボット」という表現に関しては、医療機器のように法的な定義があるわけではない。類似語には、「介護支援ロボット」、「介護福祉ロボット」などがあり、今のところさまざまな解釈がされている。また、「何がロボットか?」「どこまでがロボットなのか?」についても明確な線引きはなされていない。公益社団祉法人「かながわ福祉サービス振興会」によれば福祉機器や介護機器の中でも先端的な機器を「介護ロボット」と位置付け、大きく3つの領域を想定して事業に取り組んでいる。
1) 介護支援型
移乗・入浴・排泄など介護業務の支援をするロボット。
2) 自立支援型
歩行・リハビリ・食事・読書など介護される側の自立支援をするロボット。
3) コミュニケーション・セキュリティ型
癒してくれたり、見守りをしてくれるロボット。
同振興会で「介護ロボット」と位置付けていても、実際には医療機器、福祉機器、介護機器などに分類されているものも数多い。今後は世の中に存在しなかった介護ロボットが次々と登場し、それに伴い、介護ロボットの定義がより明確になるだろう。と同時に、介護する側にも、介護を受ける側にも、軽度の負担で効率の良い、快適な介護サービスが実現化されていくに違いない。
(資料:公益社団法人かながわ福祉サービス振興会HPより)